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20110712 Tue
「原発労働記」 被曝か事故かという二択 

「原発労働記」 被曝か事故かという二択 

原発労働記 (講談社文庫)原発労働記 (講談社文庫)
(2011/05/13)
堀江 邦夫

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著者の堀江邦夫さんが、1978年から79年にかけて、原子力発電所の下請け会社の日雇い作業員として実際に働いた体験記です。
原子力発電所の中で、作業員のみなさんは具体的にどんな作業をされているのか。
私は恥ずかしながら何も知らなかったので、とても勉強になりました。
それと同時に、ありがとう、そしてごめんなさい、という気持ちになりました。

■下請け作業員

雇用形態は日雇い。電力会社→元請け→下請け→孫請けという課程でお金がどんどんピンハネされてしまうため、作業員が手にするお金は5000円程度です。また、雇い主の親方によっては、この中からさらに宿代や食事代が抜かれることもあります。
身を削るような危険な仕事なのに、金銭面でも報われません。仕事を休むとそのぶん日当が減ってしまうため、怪我をしても具合が悪くても、無理して出てきて仕事をしてしまう。


■作業員を危険に晒す「定期検査」

原発って、しょっちゅう動かなくなったり定期点検をしたりしていますが、そのときに活躍するのが下請け作業員の方々なんですね。そして、この点検や整備の作業というのが、まさに作業員を死の危険に晒す、とても原始的で非効率的な作業なんです。いままで聞き流していた「定期検査」という言葉が、本書を読むとまるで違った印象になります。

様々な作業があると思うんですが、本書に書かれていた作業ではこのようなものがありました。例えば高圧給水加熱器のピンホール検査 (ここでは、仕事の内容ではなく、作業する人の肉体的な負担に焦点を当てて紹介します)は、加熱器に身体をねじ込ませるようにムリヤリ入り、暗く狭い空間で、無理な姿勢のまま粉塵をいっぱい吸いながら長時間作業。ここは放射線管理区域外での作業ですが、後述するようにこの「放射線の管理」が本当にいいかげんなので、本当に放射線量が低いのか、私は信用できないんじゃないかなと思いました。


■被曝か事故死かの二者択一

放射線量の高い管理区域内の作業は、さらに苛酷でです。
そして、被曝か事故かという究極の選択を迫られる場面がとても多い。

・水を抜いたプール内の作業では空気チューブのついたマスクを着用するが、チューブが折れ曲がったり踏まれるなどして空気が来なくなることがある。マスクを外せば呼吸できるが、そうなると被曝してしまう。窒息か被曝か。
・足場の悪い高所での作業。全面マスクと防護服で動きが制限され、足元も見えない。マスクを外せば足元が見えるようになるが、被曝してしまう。転落か被曝か。


■極限状態の作業で、果たしてちゃんとしたメンテナンスができるのか

全面マスクと防護服をつけてしまうと、声で意思疎通することができなくなるので、仕事の指示を出すのがとても困難になります。本書を読んではじめて、マスクと防護服を身につけること自体がこんなに苦しいんだということを知りました。

身体的にも苦しく意思疎通も困難な中で、放射能の恐怖と戦いながらの作業。
いくら作業員の方はみな頑張っているといっても、こういう極限状態の中で満足な作業ができるものなのかな。作業員の方本人は責任を持ってちゃんと仕事をやろうとしても物理的に無理があるのではないでしょうか。ボルトの締めつけが甘いまま仕事を終える、みたいなことが積み重なって事故に繋がっていくのではないかなと思ったりしました。


■作業員が全く大切にされていない

これはほんとうに読んでいてムキーっとなりました。
こんなに危険かつ重要な仕事に就いている人たちなのに、こんなにひどい扱われ方をしているなんて。
たくさんあります。箇条書きにします。

・放管教育で、「原爆と原発は違う」とか「人間はふだんから自然放射線を浴びている」という、どうでもいい知識ばかり教えて、肝心の「放射線からの身の守り方」とか「全面マスクの正しい装着の仕方」「防護服の着用方法」など肝心なことは教えない。
・マスクがそもそも壊れてたりする。
・管理区域から出るときに除染するシャワーがちょくちょく水になる。これは本当に読んでいてムキーっとなりました。なぜお湯くらい出すことができないのだろうかと。
・重労働を終えて消耗しきったところで、また新たな作業をやらされる。
・トイレにいけない。これは仕方がないことかもしれませんですが、つらいだろうなと読んでいて苦しくなりました。
・計画線量をオーバーしかけると、作業員を外に出すのではなく、逆に計画線量の方を上げてしまう。作業員の健康を全く考えていない。
・東電は原発内で作業員が倒れても滅多なことでは救急車を呼ばない。作業員の安全よりも、原発がいかに安全かを取り繕う方を優先している
・原発の設計からして、作業する人間のことを全く考えてない。設計の段階からおかしいのでは?


■電力会社と下請け会社、そして作業員。使う側と使われる側の圧倒的な格差

本書を読む限り、電力会社社員は放射線の高い区域になど近寄りませんし、下請け作業員への安全管理もしていません。それは上記の作業員の皆さんの労働環境を見てもわかりますよね。

本書を読んでショックだったのは、電力会社は安全管理を全くしないどころか、自分たちの怠慢で作業員を危険に晒したのに、ケガしたら全て自己責任と本人に押しつけていることです。65pでは、朝礼時に下請け会社の安全担当者から「これからは、構内でケガをした人は、電力(関西電力)さんにあやまりに行くことになりまして・・・」と逆にケガをした作業員が電力会社に謝らなければいけなくなったことが書かれています。この通達には、作業員のひとりが立ち上がって「だれだってケガしとうて、するんじゃないで。それなのに、だよ。いいですか、ケガして苦しむ本人が、そんな仕事をさせた電力に頭を下げんならんちゅうことは、どういうことですねん。ふざけちゃいけんよ。そんなことは、わしら下っぱに言うことじゃなくて、わしらを監督してる者に言うことやろ」と怒りの声を上げるのですが、まともな答えは返ってきません。


■「クリーンで安全」の演出が最優先。そのために危険を垂れ流している愚かしさ

・109pによると、放射性固体廃棄物処理建屋では、償却時の煙をいかに目に見えないものにするかに気を使うそう。ここで少しでも黒い煙が出ると「電力のエライさん」がすっとんできて「変なもんを燃やすな!」というので、黒い煙が出そうな放射性廃棄物は敷地の外に持ち出して海岸でこっそり焼却するという。
・「無事故○○日達成」と言いたいがために、作業員の労災を認めない。


■問題点の全ての根っこ

下請の東電に対する異常な忠誠心の背景は、受注できなくなる不安だけではなく、「電力会社が原発の安全を主張するあまりに異常とも言えるマスコミや住民への「配慮」が有形無形の圧力となって業者に跳ね返る」のではと著者の堀江さんは書いています。そして、これが事故・故障隠し、労災隠しの全てに繋がり、実際に働く作業員の人たちに押しつけることになっているのだと思いました。


■反省

こういうことを今まで知らなかった、知ろうとしなかった自分への反省です。

著者の堀江さんは、福島第一原発事故での、消防士、自衛隊員、警察官の人たちの懸命な復旧作業を讃えたあと、「そして、その懸命な復旧作業の場面をいつの日か思い浮かべられたときには、この本のなかでもくり返し述べてきたような、テレビに映ることも、人びとに感動を与えることも、賞賛されることもなく、コンクリートに囲まれた原子炉内の暗い暑い現場にはいりこみ、日々、放射能をその全身に浴びながら、ただひたすら黙々と働く下請け労働者たちがいることを、さらには、彼ら労働者たちの被ばく作業無くして原発は決して動かないのだ、との重い現実にも思いを寄せていただけたら、と思います」と書いていました。

私自身、今回の事故がなかったら、果たしてこの本を手にとっていただろうかと思います。

※文庫改定版のあとがきによると、著者の堀江邦夫さんは、後遺症に苦しんでおられるそうです

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