「イェルサレムのアイヒマン」は雑誌「ニューヨーカー」に連載中から大炎上し、アーレントは親しくしていたユダヤ人の友だちのほとんどを失ってしまったそうです。
現在では「実はナチス将校の多くは、役人的に忠実に職務をこなしていただけだった」という言説はわりと受け入れられていますが、当時「アイヒマンは悪魔ではなく普通の人間だった」というのは、とんでもないことだったようです
ユダヤ人たちから怒りを買った点は、その他に、ナチス時代に多くのユダヤ人が収容所に入れられたことで、ユダヤ社会の指導者たちがナチスに協力したと言った点、そして、イスラエルはアイヒマン裁判をショーに仕立て政治的に利用したことを指摘した点があります。
極悪非道なナチの代わりに、彼女はわれわれに『陳腐』なナチを与えた。高潔な殉教者としてのユダヤ人の代わりに、悪の共犯者としてのユダヤ人を与えた。そして有罪と無罪の代わりに、彼女はわれわれに犯罪者と犠牲者の『協力』を与えた(EJ,pp-287-288) 「ハンナ・アーレント入門」より
でも、私はこれらの具体的な内容もさることながら、炎上した要因として、アーレントのわかりづらく皮肉っぽい語り口が大きいのではないかなあと思いました。でもそうことに全く配慮しない人であるからこそ、誰もが言えないことをズバズバと指摘できたのでしょうね。
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